新年度に発足する地震火山地域防災センターについて

平成30年4月1日に地域防災教育研究センターと大学院理工学研究科附属南西島弧地震火山観測所が統合し、地震火山地域防災センターとして新たにスタート致します。
地域防災教育研究センターは、2011年6月に創設され、南九州から南西諸島地域における災害の防止と軽減を目的として、災害の実態解明や予測、防災教育、地域自治体等との防災連携活動に取り組んできました。一方、南西島弧地震火山観測所は、1991年に設置が認められ、九州南部と南西諸島北部域を中心とした地震予知・火山噴火予知を推進するための施設として活動を続けてきました。
近年の熊本地震災害、口之永良部島などの火山噴火災害を踏まえ、他のさまざま災害に加えて地震・火山災害にさらに重点を置き、地域に信頼される防災研究・防災教育の中核的センターとなるべく活動を開始します。講演では統合後の活動計画の一端と、新たな組織編成についてご紹介致します。

大規模火山噴火時にしなやかに対応できる地域社会を目指して -鹿児島大学の取り組み-

鹿児島大学地域防災教育研究センターでは、2016年からプロジェクト研究「大規模火山噴火にレジリエントな(しなやかに対応できる)地域社会の実現に向けた防災・減災の取り組み」を開始しました。このプロジェクトは、1914年に起きた大正噴火級の噴火を想定して、噴火に伴って放出される火山灰がいつ、どこに、どれだけ分布するのかを予測し、どのような噴火被害が起きるのかを評価する方法を開発することを目的にしています。そして、これらの研究の成果を、住民、地方公共団体、防災機関、企業等と連携して、火山地域の防災や減災に役立てることを目指しています。講演では、プロジェクトの3年目を迎えるにあたって、これまでどのようなことがわかってきたのか、問題点はどこにあるのか、そしてその解決策はあるのかなどについてお話します。

大噴火時における交通復旧の実施計画案と早期具体化の必要性

桜島大噴火の際に、多量の軽石が鹿児島市内に降下する場合の交通対策についてワーキンググループで検討中です。その概要について紹介します。鹿児島市に多量の軽石が降る災害には、津波や豪雨災害で用いられている道路復旧手法をそのまま採用することは出来ません。人口密集地での広域的な道路復旧には特別な方法が必要です。
たとえば、桜島の大噴火予知、それに伴う噴火前の広域的な通行止め、噴火前の作業班と重機の配置、噴火後の県内の物流を支える主要道路の早期確保が必要な点が、一般的な道路啓開手法と異なります。さらに、道路復旧段階では、鹿児島市内の住宅密集地だけで約4000万m3の膨大な軽石を短期間で除去する必要があり、全国の機関の協力と支援が不可欠です。道路が機能すれば、大噴火災害の危機的な局面を少なからず回避できます。その対応は、噴火前の現時点から、国・県・市町村や各機関が連携して具体化する必要があります。

鹿児島市の火山災害対策 ~噴火警戒レベル4引上げ対応を踏まえた対策強化~

鹿児島市では、平成27年8月に桜島の噴火警戒レベルが4に引き上げられた際の課題や教訓を踏まえ、この2年間、集中的に、火山災害対策の強化に取り組んできました。
台風等との複合災害時の避難計画を策定するなど、避難体制の強化を図ったほか、避難が長期化した場合の対策をとりまとめました。
さらには、市街地側に大正噴火級の大量の軽石・火山灰が降った場合の対策の策定を進めています。
加えて、対策の実効性を高めるために防災訓練を充実させるほか、大規模噴火を経験したインドネシアとの防災交流を行うなど、火山防災全体の向上を図っています。
〔主な内容〕
①避難体制の強化 ②長期避難対策の策定 ③市街地側の大量降灰対策の検討

火山防災の現状と課題 -火山の観光と防災-

火山噴火による災害をもたらす要因は、大きな噴石、火砕流、降灰、泥流、火山ガスなど多岐にわたり、大きな噴石や火砕流などは、噴火と同時に壊滅的・致死的な被害となります。被害の様態は、火山噴火の様式、規模により大きく異なり、規模が大きくなると広い範囲に被害が及び、規模の小さな噴火でも、御嶽山や草津白根の噴火で明らかなように、火口周辺にいる人には致命的な被害をもたらし極めて危険です。また、降灰による被害は、規模が比較的小さくとも火山周辺のみならず、広範囲に影響します。
本講演では、これら火山災害を軽減するための観測体制、情報体系、ハード整備計画、避難計画等、火山防災対策の現状と課題を述べます。また、火山地域における観光と防災という相反する課題に対し、関係団体、登山・観光客、地域住民等の協働による安全・安心な観光と地域の構築について考察します。

火山噴煙のレーダー観測について

気象研究所では、気象レーダーを用いた火山噴火の即時把握技術の開発を行っています。気象レーダーは、目視で噴火を認識できない場合の検知や規模(噴煙高度)の推定を行うことが出来ると期待されていますが、課題もあります。本講演では、近年の噴火における観測結果を用いて、気象レーダーを用いた火山噴煙観測の現状について紹介します。

雲の上から火山を見守る -航空機SARによる火山観測-

我が国は火山災害と隣り合わせといっても過言ではなく、最近でも2014年の御嶽山や本年1月の草津白根山の噴火では人命も失われています。火山活動は噴煙を伴うことや山地には雲がかかりやすいため、上空から火山活動を監視するのは容易ではありません。そこで噴煙や雲を透過して地上を観測できる合成開口レーダ(SAR)は火山の現況や変化を知るのに大変有用です。本講演では、NICTが開発した航空機SAR(Pi-SAR2)による火山観測の実例と課題についてお話しします。

SNSからの災害情報の収集、分析とその利活用

災害対応において情報は非常に重要です。インターネットの発展により、SNS等、いわば人間をセンサーとして活用できる基盤ができたと言っても良い状況を迎えています。東日本大震災においても、そのようなSNSの重要性が認識された一方で、デマなどの個人が発信する情報の信憑性の問題等があることもご存知の通りです。この講演では、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が、こういった問題を解決しつつ、SNS上の情報を有効活用するために研究開発してきたSNS上の災害関連情報を分析・要約する2つのシステムを紹介します。
さらに、その活用例、その上での課題や、今後の展望等についてお話しします。

開催趣旨

2014年の御嶽山噴火による人命被害、全島民が避難した2015年の口永良部島噴火、大規模噴火の可能性が指摘されている桜島など、火山噴火に備える防災・減災の取組は喫緊の課題です。本ワークショップの第1部では、大規模噴火では何が起きるのか、それに備えるために何を準備しておくべきかについて、大学、地方自治体、民間の防災担当者、住民の方を交えて議論します。第2部では、大正噴火級の大噴火の再来に備えた火山観測や防災・減災に関する最新の研究成果を紹介します。

PDF ワークショップ案内チラシ(547 KB)

開催日時

2018年3月3日(土)
第1部:10:00~12:00(開場 9:30)
第2部:13:30~16:30(開場 13:00)

開催場所

鹿児島大学 稲盛会館(郡元キャンパス内)
https://www.kagoshima-u.ac.jp/about/map2015-korimoto.pdf

  • 市電 ⇒ 〔市電2系統〕(郡元行き)「唐湊(とそ)」、または「工学部前」電停下車

プログラム(予定)

第1部(報告会)何が起きるのか、何をなすべきか?

主催者挨拶

近藤 英二(鹿児島大学 副学長/社会貢献推進担当)

1)新年度に発足する地震火山地域防災センターについて

浅野 敏之(鹿児島大学 地域防災教育研究センター センター長)

2)大規模火山噴火時にしなやかに対応できる地域社会を目指して -鹿児島大学の取り組み-

眞木 雅之(鹿児島大学 地域防災教育研究センター 特任教授)

3)大噴火時における交通復旧の実施計画案と早期具体化の必要性

三田 和朗(株式会社ホウセイ・技研 常務執行役員技師長)

4)鹿児島市の火山災害対策 ~噴火警戒レベル4引上げ対応を踏まえた対策強化~

馬場 瑞樹(鹿児島市 市民局 危機管理部 危機管理課 桜島火山対策係長)

質疑応答

第2部(ジョイントミーティング)大規模火山噴火時に立ち向かう最新の研究開発

主催者挨拶

細川 瑞彦(次世代安心・安全ICTフォーラム 副会長 / 情報通信研究機構 理事)

1)火山防災の現状と課題 -火山の観光と防災-

横田 崇(愛知工業大学 地域防災研究センター長/教授)

2)火山噴煙のレーダー観測について

佐藤 英一(気象庁 気象研究所 研究官)

3)雲の上から火山を見守る -航空機SARによる火山観測-

浦塚 清峰(国立研究開発法人情報通信研究機構 統括)

4)SNSからの災害情報の収集、分析とその利活用

大竹 清敬(国立研究開発法人情報通信研究機構 上席研究員)

自由討論

お申し込み方法

本ワークショップは終了しました。多くの皆様の御来場、誠にありがとうございました。

アクセス

会場地図

【主催】 鹿児島大学地域防災教育研究センター、次世代安心・安全ICTフォーラム
【後援】 総務省九州総合通信局、鹿児島市
【協力】 国立研究開発法人情報通信研究機構

▲ ページの先頭へ戻る