大規模噴火の歴史「大規模噴火の実例」

大規模噴火の事例として、桜島の大正噴火(1914年)と諏訪之瀬島の文化噴火(1813年)に共通する現象を紹介します。両者ともプリニー式噴火で始まり、火砕流の発生、溶岩の流出と続き、タイミングは異なりますが地震の発生を伴っていました。とくに桜島の例では、噴火に関連して南九州一帯で地震や火山噴火が連動するように発生しました。諏訪之瀬島の噴火でも、噴火後半に発生した地震で山体の一部が崩壊しました。もし浅海域で類似噴火がおこれば、多量の軽石(巨大軽石を含む)が湧出し、船舶の航行に支障をきたします(1779年の桜島、1934年の薩摩硫黄島など)。
噴火の規模とは関係なく大きな災害が発生する噴火現象として、火砕流状の噴煙(ブラスト:2014・2015年口永良部島噴火)と山体崩壊があります。とくに海域での山体崩壊では、大規模な津波の発生も考慮しなくてはなりません。

どんなことが起きるか「大噴火でどんなことが起きるか」

桜島で大正級の大噴火が起きた場合、約100年前の時代と異なり電気・水道・自動車に支えられている現代社会では、当時より大きな被害の発生が予想されます。とくに夏場を中心として、鹿児島市側に多量の軽石や火山灰が降り積もった場合は、噴火対策が進んでいない現状のままでは都市全体が危機的な状況になると考えられます。停電になると水道局の自家発電が10時間程度で停止し、飲用水の供給が止まります。同時に都市機能全体が麻痺します。一般の災害では、救助部隊などが緊急支援にあたりますが、道路機能の復旧が多量の火山灰と埋もれた車両に阻まれ進まないため、救助部隊も到着できません。また、道路を使用できないために、消火活動・警察・停電の復旧作業なども進みません。さらに、噴火終了後も、10年以上にわたって土砂災害が多発します。このような巨大リスクを低減するために、緊急にリスク対策を講じる必要があります。

何を準備すべきか「災害時の体制」

本県は全国110の活火山の1割にあたる11の活火山を有し、このうち霧島山や桜島など5つの火山は、気象庁が24時間体制で監視する常時観測火山となっています。昨年は口永良部島での爆発的噴火、桜島でのマグマ貫入を示す急激な地殻変動等、全国初となる噴火警戒レベル5及び4が発表されるなど、活発な火山活動が続いています。
このような中、桜島では大正噴火クラスの噴火を想定し、島外避難に主眼を置いた避難計画や避難訓練等の防災対策を進めてきたところですが、大正噴火では約1日半の噴火で大隅半島側に大量の火山灰等を堆積させており、風向きによっては鹿児島市街地等の都市部への影響も想定されることから、これらも想定した災害時の体制が必要です。
また現在、国は「高度に発達した都市での被災経験が無く、大規模降灰への知見が不足している」との火山防災対策に係る検討会での提言を受け、効果的な対応策等を検討している段階です。

何を準備すべきか「セーフコミュニティによる取組」

平成24年度から本市は、WHO(世界保健機関)が主導するセーフコミュニティの取組により、これまでの地域活動や事業を生かしながら、さまざまな統計データやアンケートなどの分析結果をもとに、地域住民・団体・行政が一緒になって、安心安全なまちづくりに向け、より効果的で継続的な活動を推進しています。
交通安全、高齢者の安全など重点的に進めている7つの分野での取組のうち、ここでは桜島地区における避難体制の再構築に取り組む「防災・災害対策」について、モデル地区である高免町町内会の取組を中心に紹介します。
① 住民の避難状況の把握
 ・住民一覧表を作成し、町内会・市・消防等で共有
 ・避難用家族カードと突合し、住民の避難状況を確実に把握
② 避難行動要支援者の避難体制確立
 ・要支援者の避難支援については、消防団が実施
③ 避難訓練の充実強化
 ・新たに作成した避難手順書に従い、避難訓練を実施

何を準備すべきか「病院の準備、家庭の備え」

鹿児島大学病院は災害拠点病院ではありませんが、鹿児島県唯一の特定機能病院として大規模災害発生時における地域への救急救命活動という責務を担っています。
大規模な災害が発生した場合、災害発生直後から急性期の災害医療を担当するDMAT(災害派遣医療チーム)を2チーム有し、災害現場での医療支援を行う体制を整備するほか、多数の患者受け入れを想定して、様々な職種が参加する災害訓練の実施、看護部による災害支援ナースの育成なども行っています。また、様々な種類の災害に備えて、物資の整備や災害対策マニュアルの作成・改訂も継続して行っています。
今回のワークショップでは、鹿児島大学病院の役割と活動とともに、ご家庭での備えについてもご紹介いたします。

基調講演「大規模噴火の監視と防災の課題」

我が国は世界有数の火山国ですが、近年の我が国の火山噴火はほとんどが中小規模噴火であって、大規模な噴火はほとんど発生していません。火山噴火の規模を示す指標である噴出物の量からみると、10億 m3を超える大規模噴火は桜島の大正大噴火以来発生していません。つまり、わが国では都市化が進んだ現代になってから大規模噴火をほとんど経験していないということになります。
2013年に内閣府主催の「広域的な火山防災対策に係る検討会」が「大規模火山災害対策への提言」をとりまとめ、その中で大量の降灰に対する対策の必要性等、多くの課題が示されました。講演では大規模噴火の監視と防災について、直面している課題についてお話します。

技術セッション「災害リスク情報の共有と利活用」

災害に対する予防力・対応力・回復力を向上させるために、情報は各種セクター(国、自治体、地域コミュニティ等)間をつなぐ重要な役割を果たします。ここでは、平時および災害時における情報共有・利活用に関する実際の対応事例と、国としての新しい動きを紹介します。

技術セッション「火山防災への取組」

九州地方整備局では、平成23年の霧島山(新燃岳)噴火を踏まえ、大規模火山噴火時における各種調査技術の開発の検討を進めています。また、昨年5月の口永良部島噴火時には、これらの調査技術を実践的に活用しました。今回は、九州地方整備局の火山防災に対する取組について報告します。

技術セッション「大規模噴火の降灰予測」

気象庁(JMA)は、予想降灰量を「多量(厚さ1 mm以上)」、「やや多量(0.1~1 mm)」、「少量(0.1 mm未満)」の3階級で示した新しい降灰予報を2015年3月から開始しました。この予報は、領域移流拡散モデル(JMA-RATM)の計算結果に基づきますが、大規模噴火時は極めて多量の降灰が予想されます。本講演では、1914年桜島噴火(大正噴火)の規模を想定して、風の場の違いを考慮したRATMで予想される降灰および降礫の可能性について考えます。

技術セッション「雲の上から火山の状況を把握 -航空機搭載SAR-」

航空機搭載SARは、電波を利用して地上をあたかも航空写真のように観測することができます。その大きな特徴は、雲があってもその上から地上の様子を鮮明に把握することです。火山観測においては、その全天候性に加え噴煙下の火口の様子を詳細に把握でき、火山活動の推移を予測する材料になります。本講演では、NICTが開発したPi-SAR2による観測の事例をもとに、火山での有用性や課題についてお話いたします。

技術セッション「地域内の通信と情報共有を実現する途切れにくいネットワーク」

耐災害情報通信基盤 NerveNetは、災害に強く、低コストで安全に地域内の情報交換と共有を実現するシステムです。通信が途切れにくく、インターネットに依存しない地域内通信が可能です。各種有線や無線回線を利用して構築できる柔軟性があり、インターネットとは別の物理網ゆえ情報の安全を確保しやすい特徴もあります。地域基盤として実証中の宮城県女川町、和歌山県白浜町、長野県塩尻市等の事例、可搬型装置で臨時にネットワークを構築して避難所間情報共有を実証した事例、複数の消防車両同士をつないで映像伝送に成功した事例など、さまざまな実証事例を紹介します。

技術セッション「滞空時間の長い無人機による無線中継と災害モニタリング」

滞空飛行時間の長い固定翼の小型電動無人機を空飛ぶ電波タワーとして活用し、災害時に孤立した地域との間の通信を迅速に確保したり上空からの映像をリアルタイムに長距離伝送するシステムの研究開発と実証実験の取組みについて概要を述べるとともに、ドローンを含む小型無人機を制御するための無線技術の動向について紹介します。

ワークショップの目的

2014年の御嶽山噴火による人命被害、全島民が避難した2015年の口永良部島噴火、大規模噴火の可能性が指摘されている桜島など、火山噴火に対する防災・減災の取り組みは喫緊の課題です。本ワークショップの第1部では、大規模噴火時に何が起きるのか、それに対処するために何を準備しておくべきかについて、大学、地方自治体や民間の防災担当者、住民の方を交えて議論します。第2部では、大正噴火級大噴火の再来に備えた火山観測や防災・減災に資する最新の技術開発を紹介します。

PDF ワークショップ案内チラシ(517 KB)

開催日時

2016年3月5日(土)
第1部:10:00~12:30(開場 9:30)
第2部:14:00~17:00(開場 13:30)

開催場所

鹿児島大学 共通教育棟1号館 125号講義室(郡元キャンパス内)
https://www.kagoshima-u.ac.jp/about/map2015-korimoto.pdf

  • 市電 ⇒ 〔市電2系統〕(郡元行き)「唐湊(とそ)」、または「工学部前」電停下車
  • 市営バス(鹿児島中央駅経由) ⇒ 9番線(武岡・鴨池港線)、11番線(鴨池・冷水線)、18番線(大学病院線)、20番線(緑ヶ丘・鴨池港線)「鹿大正門前」または「法文学部前」下車
  • 鹿児島交通バス(鹿児島中央駅経由) ⇒ 19番線「鹿大正門前」または「法文学部前」下車
  • 南国交通バス(鹿児島中央駅経由) ⇒ 30番線「鹿大教育学部前」下車

プログラム(予定)

第1部 何が起きるのか、何をなすべきか

司会:下川 悦郎(鹿児島大学 地域防災教育研究センター 特任教授)

主催者挨拶

前田 芳實(鹿児島大学 学長)

1)大規模噴火の歴史

大規模噴火の実例小林 哲夫(鹿児島大学名誉教授)

2)どんなことが起きるか

大噴火でどんなことが起きるか三田 和朗(株式会社ホウセイ・技研 常務執行役員技師長)

3)何を準備すべきか

災害時の体制大竹 俊光(鹿児島県危機管理防災課)

セーフコミュニティによる取組郡司 清隆(鹿児島市危機管理課)

病院の準備、家庭の備え内山 美香(鹿児島大学病院 救急病棟副師長)

第1部の閉会と第2部のご案内

熊谷 博(次世代安心・安全ICTフォーラム 企画部会 部会長 / 情報通信研究機構 耐災害ICT研究センター 副研究センター長)

第2部 大規模火山噴火時に立ち向かう最新技術開発

司会:熊谷 博(次世代安心・安全ICTフォーラム 企画部会 部会長 / 情報通信研究機構 耐災害ICT研究センター 副研究センター長)

主催者挨拶

富田 二三彦(次世代安心・安全ICTフォーラム 副会長 / 情報通信研究機構 理事)

1)基調講演

大規模噴火の監視と防災の課題山里 平(気象研究所 火山研究部長、前鹿児島気象台長)

2)技術セッション

噴火被害の観測・予測・減災技術の最前線
コーディネータ:臼田 裕一郎(防災科学技術研究所)

災害リスク情報の共有と利活用臼田 裕一郎(防災科学技術研究所)

火山防災への取組永吉 修平(国土交通省九州地方整備局)

大規模噴火の降灰予測新堀 敏基(気象研究所)

雲の上から火山の状況を把握 -航空機搭載SAR-浦塚 清峰(情報通信研究機構)

地域内の通信と情報共有を実現する途切れにくいネットワーク井上 真杉(情報通信研究機構)

滞空時間の長い無人機による無線中継と災害モニタリング三浦 龍(情報通信研究機構)

ワークショップを閉じるにあたって

浅野 敏之(鹿児島大学 地域防災教育研究センター センター長)

お申し込み方法

参加費は無料です。

本ワークショップは終了しました。多くの皆様の御来場、誠にありがとうございました。

アクセス

鹿児島大学郡元キャンパス案内図

【主催】 鹿児島大学地域防災教育研究センター、次世代安心・安全ICTフォーラム
【後援】 内閣府(防災担当)、文部科学省、国土交通省九州地方整備局、総務省九州総合通信局
【協力】 防災科学技術研究所、情報通信研究機構

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