NICTリモートセンシング技術の最新動向

NICTでは、電磁波の伝搬に大きな影響を与える大気・地表面の状態把握と、その情報を活用した防災・減災をはじめとする社会課題解決に向けた分析・予測等に役立つリモートセンシング技術の研究開発に取り組んでいます。本講演では、第3世代となる航空機搭載合成開口レーダーの最新観測、フェーズドアレイ気象レーダーによる高速3次元降水観測や地デジ放送波を用いた水蒸気量観測、最新のライダー開発などについて紹介します。

地デジ放送波を用いた水蒸気量観測と九州地区における観測網構築

NICTにて開発したパッシブセンシング技術である地上デジタル放送波を用いた水蒸気量観測と九州地区における観測網構築の現況を紹介。地上デジタル放送波を用いた水蒸気量観測は、線状降水帯観測と早期予測に寄与するため九州地区において観測網構築を行っています。観測網構築に先立ち、NICTと地上デジタル放送受信機器メーカーである日本アンテナにて共同研究開発を行った屋外観測装置と観測網構築の現状、観測データのクラウド配信、観測データを用いた湿度分布の同化結果Webをご紹介します。

総務省委託課題「リモートセンシング技術のユーザー最適型データ提供に関する要素技術の研究開発」で目指す機械学習を用いたデータ提供システム

本講演では、今年4月に始まった総務省委託研究課題について紹介します。リモートセンシングデータは、センシング技術の高度化により時空間解像度が向上し、データ量が増大しています。その一方で通信路は、災害時などに逼迫する可能性があります。本研究課題では、機械学習技術を利用したデータの分析、圧縮を行うことで非常時にもユーザーの必要とする情報が伝送できるプラットフォームの構築を目指します。その計画について述べます。

宇宙天気予報の最新動向

太陽活動を源として発生する宇宙環境の変動、すなわち「宇宙天気」は、通信・放送、衛星運用などに影響を及ぼし、しばしば障害を引き起こします。宇宙環境研究室では、こうした社会インフラの安定運用に資するため、宇宙天気の現況把握や予測する技術の研究開発に取り組んでいます。本講演では、宇宙天気に関わる国内外の動向やNICTで取り組む最新の研究開発について紹介します。

次期ひまわり衛星への同時搭載を目指した宇宙環境センサーの開発

私たちの身近な地上ICTを支えるインフラの宇宙空間への拡大が、近年急速に進んでいます。しかしながら人工衛星等の宇宙システムは、潜在的に宇宙環境変動に対する脆弱性があり、想定外の誤動作や不具合のリスクと常に隣り合わせで運用されます。宇宙環境による宇宙インフラの故障リスクを軽減・回避するためには、宇宙環境の変動を定常的に計測することが重要です。また、具体的な対処を促すための時間を確保するには、予警報の高精度化が必要です。NICTでは、総務省の委託研究課題「ひまわりの高機能化研究技術開発」として、地上の気象観測を担う気象衛星ひまわりに同時搭載可能な宇宙環境センサーの開発を開始しています。気象衛星への同時搭載が達成されれば、日本での自立的な宇宙環境監視の強化と宇宙天気予報の高度化が期待されます。本講演では、本研究技術開発の詳細について紹介します。

地磁気誘導電流(GIC)宇宙天気予報の高精度化に向けて

磁気嵐など地磁気が乱れると送電線に地磁気誘導電流(geomagnetically induced current, GIC)が流れ、送電設備に対して深刻な影響を与えることがあります。地磁気緯度が低い日本ではGICの影響が顕在化する頻度は極めて低いと考えられますが、過去に発生した巨大フレアや巨大磁気嵐の記録を鑑みるとゼロリスクであるとは言い切れず、GICの影響を十分に検討し、予測スキームを整備しておくことが必要と思われます。本講演では、日本で注意すべき磁気嵐の規模とそれを予測するためのスキームについて最新の検討状況を報告します。

タイトル

最先端センシング技術の紹介:地球を観る・宇宙を観る

開催日時

2022年6月3日(金)13:30 ~ 16:50(オンライン開催)

本シンポジウムはビデオコミュニケーションツール「Zoomウェビナー」を使ったオンラインイベントです。お申し込みいただいた方には、参加用URLをメールにてお送りします。

開催概要

次世代安心・安全ICTフォーラムのセンシング技術部会では、電波や光など文字通りセンサー技術を利活用した研究開発を促進するための活動を行っております。今回の講演会では、その対象として地球上、宇宙の両面に焦点を当てそれぞれ最新の研究成果をご紹介します。

講演会プログラム

13:30 ~ 13:35開会挨拶松島 裕一次世代安心・安全ICTフォーラム 会長
第1部 地球を観る-リモートセンシング技術
13:35 ~ 14:05【講演1】
NICTリモートセンシング技術の最新動向
川村 誠治情報通信研究機構 電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター リモートセンシング研究室 室長
14:05 ~ 14:35【講演2】
地デジ放送波を用いた水蒸気量観測と九州地区における観測網構築
北井 信則日本アンテナ株式会社 経営戦略室 事業創出G・ソフトウェア統括G
14:35 ~ 15:05【講演3】
総務省委託課題「リモートセンシング技術のユーザー最適型データ提供に関する要素技術の研究開発」で目指す機械学習を用いたデータ提供システム
前田 新一株式会社Preferred Networks シニアリサーチャー
15:05 ~ 15:15休憩  
第2部 宇宙を観る-宇宙環境技術
15:15 ~ 15:45【講演4】
宇宙天気予報の最新動向
津川 卓也情報通信研究機構 電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター 宇宙環境研究室 室長
15:45 ~ 16:15【講演5】
次期ひまわり衛星への同時搭載を目指した宇宙環境センサーの開発
坂口 歌織情報通信研究機構 電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター 宇宙環境研究室 主任研究員
16:15 ~ 16:45【講演6】
地磁気誘導電流(GIC)宇宙天気予報の高精度化に向けて
海老原 祐輔京都大学生存圏研究所 准教授
16:45 ~ 16:50閉会挨拶門脇 直人次世代安心・安全ICTフォーラム 副会長

※講演タイトル等プログラムは都合により一部変更になる場合があります。

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