次世代安心・安全ICTフォーラムは、2007年6月の設立以来、安心・安全な社会の構築に向けて重要となる、防災・減災に関わる広範囲な情報通信技術を産学官連携により社会展開する組織として積極的な活動をして参りました。設立の背景を踏まえ、これまでのフォーラムの活動を振り返ると共に、フォーラム終結後の展望について提言します。
1978年 早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了(工学博士)
1978年 国際電信電話(株)(後のKDD、KDDI)
1998年 (株)KDD研究所 取締役
2001年 (株)KDDI研究所代表取締役 副所長
2003年 独立行政法人通信総合研究所(CRL) 情報通信部門長
2006年 独立行政法人情報通信研究機構(NICT) 理事
2010年 早稲田大学研究戦略センター 教授
2010年 同学グリーン・コンピューティング・システム研究機構長併任
2019年 同学定年退職、IEEE、電子情報通信学会、応用物理学会よりフェロー称号
2017年より、次世代安心・安全ICTフォーラム 会長
本フォーラムのセンシング技術部会の活動から(NICTや大学の)基礎研究の重要性の再認識とそれを応用するための民間事業者との連携の必要性が見えてきています。センシング技術開発では電磁波に対する物理量の特性の把握とデバイスの開発が重要となります。また、基礎技術を広く社会に応用するためには、利用者に近い立場にいる事業者との連携も不可欠であり、本フォーラムでも両者の連携がうまくいった事例が多くあります。本講演では部会活動をおもに基礎研究と技術応用の連携の観点で振り返り、将来の方向性を考えます。
1964年生。1994年 北海道大学理学研究科博士課程修了、博士(理学)。
1994年より郵政省通信総合研究所(現 情報通信研究機構)にて主に衛星搭載レーダ・地上レーダを用いた研究開発に従事。2015年5月名古屋大学地球水循環研究センター着任。2015年10月改組により現職。
研究成果の社会展開の促進を目指し、部会の中にワーキンググループ等を機動的に編成し、産学官連携のもとで活動しました。このなかで通信技術部会では、これまで衛星通信技術や防災・減災通信技術等に取り組むとともに、新たな技術動向に対応する課題の検討を行ってきました。また企画部会では、防災等のニーズのもとで、臨機に火山防災や大気環境監視等の問題に取り組むグループを組織し、地域における研究会開催を通じて減災技術の展開を促進しました。この他に、毎年2月に震災技術展への出展と「災害・危機管理ICTシンポジウム」を開催する等、防災関連技術の周知と社会展開に寄与するとともに、会員企業様の技術紹介等の活動を行いました。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の前身を含め2019年まで勤務。この間電波リモートセンシング、耐災害ICT等の研究に従事。
ナショナル・レジリエンス(国土強靭化)には、自然環境を災害時にも持続的にセンシングする技術、各種センシングデータの可視化・解析技術、それらデータを安定して運ぶ無線通信、光通信、宇宙通信技術、さらにソーシャルメディアを活用した災害状況把握技術など、広範なICTの貢献が期待されています。情報通信研究機構が研究開発に取り組むこれらICTの最新状況をご紹介します。
1992年 京都大学工学部電気工学第二学科卒
1997年 東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了、博士(工学)
1997年 郵政省通信総合研究所 研究官採用
2016年 情報通信研究機構グローバル推進部門 室長
2021年 同機構レジリエントICT研究センター 研究センター長
ミリ波超高速無線LAN、第4世代移動通信、耐災害ネットワーク等の研究開発、国際連携・展開事業等に従事。総務省「大規模災害時の非常用通信手段の在り方に関する研究会」構成員(2016-17年)、「地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段のガイドライン策定等に係る検討会」委員(2021-22年)。前島密奨励賞(2021年)、電子情報通信学会フェロー(2021年)、日本ITU協会功績賞(2020年)、文部科学大臣表彰科学技術賞(2019年)ほか受賞。
内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」において、線状降水帯の観測・予測技術の開発プロジェクトを防災科研とNICT等の研究機関が実施しています。研究チームは線状降水帯の自動検出技術開発を行い、その技術に基づき、気象庁の「顕著な大雨情報」が2021年に運用開始され、線状降水帯の見逃しを防ぐことが可能となりました。より早期避難を実現するために、最新の水蒸気観測網を活用した予測技術開発を進め、自治体との実証実験で精度検証を行い、予測技術の民間気象会社での社会実装を目指しています。
1997年-2001年 北海道大学理学部物理系(地球科学科 気象学研究室)
2001年-2003年 名古屋大学大学院環境学研究科 博士前期課程
2003年-2006年 名古屋大学大学院環境学研究科 博士後期課程 満了
2007年12月 名古屋大学大学院環境学研究科 博士後期課程 修了
2006年-2008年3月 防災科学技術研究所 契約研究員(研究員型)
2008年4月-2010年7月 防災科学技術研究所 任期付研究員
2010年8月-2012年3月 防災科学技術研究所 研究員
2012年4月-現在 防災科学技術研究所 主任研究員
2018年12月-現在 防災科学技術研究所国家レジリエンス研究推進センター 研究統括
令和3年度NICT委託研究「Beyond 5G のレジリエンスを実現するネットワーク制御技術の研究開発」では、災害時に無線セルを再構成する光・無線リソース適応制御技術、無線フロントホールの構成と隣接無線セルの救済に利用できるマルチタスクアンテナ技術、及びネットワークの被害状況に応じた自立電源制御技術を提案しています。本講演では、本研究開発の概要を紹介すると共に、レジリエントな無線通信ネットワークにおけるアンテナの役割を述べます。
1994年 東北大大学院博士後期課程了、博士(工学)。
現在同大学院工学研究科通信工学専攻電磁波工学分野教授。アンテナ、マイクロ波・ミリ波、電磁界の測定法及び数値解析法の研究等に従事。電子情報通信学会(IEICE)論文賞、喜安善市賞受賞。IEICE光応用電磁界計測特別研究専門委員長、無線電力伝送研究専門委員長、アンテナ・伝播研究専門委員長、IEEE Antennas and Propagation Society Tokyo Chapter Chairを歴任。IEICEフェロー。
次世代安心・安全ICTフォーラムは今年度を以て活動を終了することとなりますが、この分野の議論は本フォーラム以外に複数の場で可能となっています。本講演では、本フォーラムのヘリテージを基礎として他機関や他の議論の場との連携と、今後の議論の発展性の可能性を示します。
2010年 東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了。
1984年 三菱電機入社。
1986年 郵政省電波研究所(現 国立研究開発法人情報通信研究機構)入所。
以来、衛星通信技術の研究開発に従事。2008年打上げの高速衛星ネットワーク実験衛星WINDSの開発、海底資源調査用衛星通信ネットワークの開発等を主導。1998年NASA Group Achievement Award、2012年IEEE Satellite Communications Distinguished Service Award受賞。現在、情報通信研究機構理事。
次世代安心・安全ICTフォーラムは、2007年6月の設立以来、安心・安全な社会の実現に向けて、様々なセンシング技術から地上・宇宙での通信技術にわたる広範囲なICT(情報通信技術)を産学官連携により社会展開を推進する組織として活動して参りました。設立後14年を超える活動の結果、設立当初の目的を達成したことから、今年度をもって活動を一区切りとする方向で動いています。そこで、これまで本フォーラムで取り組んできた活動を取りまとめるとともに、安心・安全な社会の実現に向けた今後の連携方策等を議論する「次世代安心・安全ICTフォーラム講演会 -活動の総括と今後-」を下記のとおりオンラインで開催いたします。
本講演会は終了いたしました。多数のご参加誠にありがとうございました。
13:00-13:05 | 開会挨拶 | 松島 裕一 | 次世代安心・安全ICTフォーラム 会長 | |
13:05-13:10 | 来賓ご挨拶 | 小川 裕之 | 総務省 国際戦略局技術政策課 研究推進室 室長 | |
第1部 | ||||
13:10-13:35 | 【基調講演】 これまでのフォーラム活動を振り返って | 松島 裕一 | 次世代安心・安全ICTフォーラム 会長 | |
13:35-13:55 | 【講演1】 活動総括①:センシング技術部会の活動と成果 | 高橋 暢宏 | 次世代安心・安全ICTフォーラム センシング技術部会 部会長(名古屋大学) | |
13:55-14:15 | 【講演2】 活動総括②:通信技術部会および企画部会の活動と成果 | 熊谷 博 | 次世代安心・安全ICTフォーラム 企画部会 部会長 | |
14:15-14:25 | 休憩 | |||
第2部 | ||||
14:25-14:50 | 【講演3】 安心・安全に向けた最新の活動紹介①: ナショナル・レジリエンスに向けたNICTの取り組み | 井上 真杉 | 情報通信研究機構 ネットワーク研究所 レジリエントICT研究センター 研究センター長 | |
14:50-15:15 | 【講演4】 安心・安全に向けた最新の活動紹介②: 災害発生が迫った線状降水帯の予測手法開発と直前避難の実現をめざす実証実験 | 清水 慎吾 | 防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門 国家レジリエンス研究推進センター 研究統括 | |
15:15-15:40 | 【講演5】 安心・安全に向けた最新の活動紹介③: Beyond5G のレジリエンスを実現するための研究開発 | 陳 強 | 東北大学 大学院工学研究科 通信工学専攻 波動工学講座 電磁波工学分野 教授 | |
15:40-15:55 | 【講演6】 安心・安全ICTに関する今後の連携について | 門脇 直人 | 次世代安心・安全ICTフォーラム 副会長 | |
15:55-16:00 | 閉会挨拶 | 門脇 直人 | 次世代安心・安全ICTフォーラム 副会長 |